野球肘

野球肘の痛みに苦悶の表情を浮かべ、ダグアウトのベンチに座りながら肘を押さえる日本人選手

 

野球肘の痛みは筋肉の張りが痛みの原因であれば、それらを鍼やマッサージで緩めることで症状の改善が期待できます。

 

しかし、症状が改善(痛みが消失)しても肘に負担がかかる投球フォーム(「テークバック時に肘が下がっている」「上半身の開きが早い」など)、を繰り返す症状を再発させる可能性があります。

 

当院では、元プロ野球チームのトレーナーとしての施術経験を活かし、投球障害予防の観点から医学的根拠(肘の痛みが出現するメカニズム)をもとに、

  • 投球動作や痛みの部位から痛みの原因を考える
  • 肘の痛みの原因となっている筋肉の張りを細かく探し、マッサージや鍼で丁寧に施術し緩める
  • 肘関節を含めた全体的な可動域の改善を図る
  • 痛みを再発させないための投球動作の改善のアドバイス

など様々の視点から専門的にアプローチいたします。

 

※以下「筋肉の張りが野球肘の原因の場合」として、施術方針をご説明いたします。

(対応競技例:野球、ソフトボール、バレーボール、テニス、バドミントン、水泳、など)

 

野球肘と野球肘肩は共通点が多くあります。

「野球肩でお悩みの方」は、こちらをご覧ください

→ 野球肩の改善


野球肘の症状

野球肘の痛みの発生部位を分類した解剖図(内側型、外側型、後方型)

 

野球肘は以下のような症状があります。

 

【投球時の痛みや違和感】

  • 初めは肘周囲の筋肉の張りだったが次第に痛みに変わった
  • 軽く投げる分には痛みは無いが強く投げると痛い
  • キャッチボールでは痛みは無いが、フィールディングの投球時に痛みが出る
  • 投げ始めに痛みがあるが、温まると痛みが消える(軽減する)
  • スナップスローをすると痛みが出る

 

【投球動作局面での痛み】

  • トップの位置から投げに行こうとする局面(レイトコッキング期)で痛みが出る
  • 投げようとする瞬間(ボールリリース時)に痛みが出る
  • フォロースルーの時(ボールリリース後)に痛みが出る

 

【投球以外での肘の状態】

  • バッティングでも痛みが出る
  • 肘の曲げ伸ばしだけで痛みがある
  • 肘の前側に痛みがある(鉤状突起:こうじょうとっき・上腕二頭筋など)
  • 肘の後ろ側に引っかかる感じがする
  • 肘の痛みがあり肘が曲がらない為、顔や頭が洗えない

 

【野球肘は痛みの場所によって「3つのタイプ」に分かれます】

【内側型】

肘の内側に痛みがある(内側上顆:ないそくじょうか・尺側手根屈筋:しゃくそくしゅこんくっきん、など)

⇒ 内側型の原因はこちら

 

【後方型】

肘の後ろ側に痛みがある(肘頭:ちゅうとう・肘頭窩:ちゅうとうか・肘筋:ちゅうきん、など)

⇒ 後方型の原因はこちら

 

【外側型】

肘の外側に痛みがある(外側上顆:がいそくじょうか・腕橈骨筋:わんとうこつきん、など)

⇒ 外側型の原因はこちら


こんな状態でお困りではないですか?

 【医療機関にて以下の診断を受けた方】

  • 内側上顆裂離骨折(ないそくじょうかれつりこっせつ)
  • 離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)
  • 内側側副靭帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう)
  • 尺骨神経障害(しゃっこつしんけいしょうがい)
  • 肘頭骨棘(ちゅうとうこつきょく)
  • 遊離軟骨:関節ネズミ
  • 血行障害:手指が冷たくなる・指がしびれてくる)

 

【医療機関にて診察後、このような状態でお困りの方】

  • MRI検査などで痛みの原因が特定できず、長期間、肘の痛みが続いている
  • MRI検査などで炎症所見は無くなったが、肘の痛みが続いている
  • MRI検査などで炎症所見は無くなったが、肘や肩周囲の筋肉が硬く可動域が狭い
  • 医師には手術を勧められているが、できれば手術をせずに保存療法で治したい
  • 常に指先が冷たい状態が続いている
  • 指先の感覚が鈍い状態が続いている

上記のような場合、肘や肩周囲の張っている筋肉をゆるめることで状態改善できる可能性もございます。

是非、当院にご相談・ご来院いただければと思います。

野球肘の原因

野球肘は「投手・野手」を問わず、 以下のような原因が考えられます。

  • 投球過多(投げ過ぎ)
  • 肘の内側に負担のかかる投げ方(外反ストレス)
  • フォロースルーを取らない、肘を伸ばすだけで終わる「手投げ」のような投げ方
  • スナップスロー(手首だけで投げる投げ方)の継続
  • 無理な体勢からのスローイング練習の継続
  • 試合や練習の蓄積疲労による、肘や肩周囲の筋肉の張りや可動性の低下

その他、痛みの部位によっては、下記のような原因も考えられます。


【野球肘で内側に痛みが出る原因】

野球肘の内側の痛みの部位

トップの肘の位置が低く肘の内側に痛みが出やすい投げ方の野球選手

トップ(肘)の位置が低い(原因の一例)

 

肘の内側の痛みが出る部位
肘の内側の痛みに関連する前腕の筋肉群を示す解剖図(長掌筋、尺側手根屈筋、円回内筋など)

 

  • 投球過多(投げ過ぎ)
  • 肘周囲の筋肉(上腕・前腕)の筋肉の張り
  • 肘の可動域が狭くなっている
  • 肩の可動域が狭くなっている
  • 内側靭帯の緩みや損傷
  • 投球フォームの破綻(トップの位置が低く、上半身の開きが早いと肘の内側にストレスがかかり痛みが出やすい)

→野球肘と投球動作局面(phase)の関連はこちら

【野球肘で後ろ側に痛みが出る原因】

野球肘の後ろ側の痛みの部位

フォロースルー時に、肘の後ろ側(肘頭や肘頭窩:ちゅうとうかなど)にインピンジメントが起こりやすい投げ方の野球選手
肘の後ろ側の痛みが出る部位
肘の後ろ側のインピンジメントが起こりやすい部位を示す解剖図(肘頭や肘頭窩:ちゅうとうか、など)

  • 上腕二頭筋・三頭筋の張り
  • 前腕の筋肉の張り
  • 肘周囲の筋肉の張りによる肘の可動域制限(曲げにくい・伸ばしにくい)
  • 肘の後ろ側(肘頭:ちゅうとう、肘頭窩:ちゅうとうか)のインピンジメント(ぶつかり・こすれ)
  • 内側靭帯の緩みや損傷
  • 投球フォームの破綻(トップの位置が低い、スナップスローの継続など)

→野球肘と投球動作局面(phase)の関連はこちら

【野球肘で外側に痛みが出る原因】

野球肘の外側の痛みの部位

フォロースルー時に、肘の外側に痛みが出やすい投げ方の野球選手
肘の外側の痛みが出る部位
肘の外側の痛みに関連する前腕の筋肉群を示す解剖図(長橈側手根伸筋:ちょうとうそくしゅこんしんきん、短橈側手根伸筋:たんとうそくしゅこんしんきん、など)

  • 肘の外側(外側上顆付近)の筋肉の張り
  • 上腕・前腕の筋肉の張り
  • スナップスローの継続
  • 内側側副靭帯の緩みによる肘の外側の関節(腕橈関節:わんとうかんせつ)のインピンジメント(ぶつかり・こすれ)
  • 投球フォームの破綻(トップの位置が低い、体の開きが早いなど)

→野球肘と投球動作局面(phase)の関連はこちら

【野球肘と投球動作の局面(phase)の関連】

野球肘の痛みが出る投球動作局面を確認するためのフェーズ図

 

1:コッキング初期(アーリーコッキング期 early cocking phase)
※ワインドアップからテークバックのトップの位置までの局面

  • トップの位置(肘の高さ)が肩の高さまで上がっていないと、体を回旋していった時に肘の内側にストレスがかかり肘の内側に痛みにつながる。
  • 肘の内側にストレスがかかり続けると、肘の内側靭帯が損傷(緩む)し、内側靭帯が緩むと肘の外側(腕橈関節:わんとうかんせつ)にインピンジメント(ぶつかりや擦れ)が起こり、肘の外側の痛みにつながる
  • 左足接地時(右投げの場合)、上半身や左腰が開いていると体の回旋による下半身からの力の伝達(運動連鎖:キネティックチェーン)がうまくできず肘(内側・外側・後側)の痛みにつながる

 

2:コッキング後期(レイトコッキング期 late cocking phase)

※トップの位置から最大外転外旋位(MER : Maximum External Rotation)までの局面

  • MERの時に、肘の屈曲角度が浅いと肘の内側へのストレスがかかりやすく肘の内側の痛みにつながる

 

3:加速期(アクセラレーション期 acceleration phase)
※MERからボールリリースまでの局面

  • ボールリリースまでの腕の軌道で「肘下がり」が起きると、肘の内側の痛みにつながる(肘の内側靭帯が緩い場合は、肘の外側、後ろ側の痛みにもつながる)

 

4:ボールリリース
※ボールを放す局面

5:フォロースルー期(follow through phase)
※ボールリリースから腕を振り切った最後の位置までの局面

  • 腕をしっかり振り切れない「体が硬い(前屈の可動域が狭い)選手」や「フォロースルーを途中で止める動作」は、の後ろ側(肘頭:ちゅうとう・肘頭窩:ちゅうとうか)や肘の外側にストレスがかかり、肘の外側や後ろ側の痛みにつながる

野球肘の施術

野球肘の施術時に以下のことを確認します。 

 

【部位や動き】

  • 肘の痛みの部位
  • 肘の痛みが出た原因
  • 肘の各種テストでの痛みの有無
  • 肘の形状
  • 肘の曲げ伸ばしの可動域
  • 肘の曲げ伸ばしを制限している筋肉
  • 肩の挙がり方
  • 肩の可動域、可動性
  • 全体的な筋肉の張り
  • 全体的な関節の可動性

 

【投球動作の確認】

ボールを持って軽く投球動作をしていただきます。

※肘の痛みは、肩の挙上との関連があるので、肩周囲の筋肉の張りも確認し施術します。

肩の可動性が改善することでテークバック時に適切なトップの位置までスムーズに肩が挙がり、肘の内側への負担(外反ストレス)が軽減され、最終的に「投球動作の改善」「投球時の肘の痛みの改善」につながると考えております。

 

【野球肘の主な施術部位】

上記項目を確認後、原因部分(下記の筋肉など)を探しながら、マッサージや鍼で丁寧に施術いたします。

  • 長掌筋(ちょうしょうきん)
  • 尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん)
  • 円回内筋(えんかいないきん)
  • 腕橈骨筋(わんとうこつきん)
  • 上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)
  • 肘筋(ちゅうきん)
  • 上腕筋(じょうわんきん)
  • 上腕二頭筋腱(じょうわんにとうきんけん)
  • 肘の痛みに関連している筋肉の張り
  • 肘の可動域を制限している筋肉の張り
  • 肘の屈曲、伸展時の引っかかりの原因となる筋肉
  • 肘周囲の筋肉をゆるめるための施術経験上のポイントとなる部分(詳細は施術時にお伝えします)

 

【施術後の目標】

  • 肘関節の可動域・可動性の改善
  • 痛みが出る投球動作局面での痛みの消失

 

「投球フォーム」が野球肘の原因の場合は、施術中または施術後に、投球障害予防の観点から医学的根拠をもとにに痛みを出さない為の投球動作のアドバイスをさせていただきます。

小学生・中学生の野球肘を繰り返さないために

小学生・中学生(ジュニア期)の野球肘は、基本的には投球過多(投げ過ぎ)による筋肉の張りが痛み原因の場合が多いため、安静にすることで多くの選手は症状が改善します。

しかし安静にして痛みが改善しても「肘に負担のかかる投げ方」をした場合、痛みの再発を繰り返してしまいます。

また、痛みが消失しても肘周囲の筋肉の張りが残っている場合は、痛みが改善しないことも多くあります。

その場合にはやはり「ジュニア期」といえども、

  • 張っている筋肉をゆるめる
  • 各部位の可動域・可動性を改善させる
  • 肘に負担のかかりにくい投球動作の体得

が、長期的な再発予防には必要と考えます。

 

※施術後、肘の痛みの確認をする動作をしていただきますが、「実際にボールを投げないと痛みの確認ができない」ということが多くあります。その場合は、ご自宅等で投球時の痛みの状況をご確認いただき、改めてお教えください。(投球動作を動画で撮影して、LINEで送っていただけると、より細かく分析とアドバイスが可能です。料金はいただきません。)

その他、野球による様々な故障に対しても今までの野球選手の施術経験を活かし、医学的根拠や故障のメカニズムを考え施術いたしますのでお気軽にご相談・ご来院いただければと思います。

野球肘を改善させるには:ネットスローによる動作改善

野球肘動作改善のためのネットスローをする野球選手。足元のラインとネットの目印を使い、投球フォームを意識しながら投げる様子

ネットスローによる動作改善の様子

野球肘を改善させるには、痛みに関連する筋肉を緩めることも重要ですが、「肘に負担のかかる投球フォーム」が原因で野球肘を発症した場合、その投げ方を修正しない限り再発を繰り返します。

 

当院では、野球肘を繰り返さないためには、投球障害予防の観点から医学的根拠に基づいた投球理論による「ネットスローでの動作改善」を推奨しています。



【なぜキャッチボールではなく「ネットスロー」なのか?】

投球再開の第一歩として「キャッチボール」ではなく「ネットスロー」を推奨するのには理由があります。

キャッチボールには必ず「相手」がいます。相手が捕りやすい場所へ投げようと意識が働くと、フォームよりもコントロールを優先してしまい、無意識に「慣れ親しんだ元の悪いフォーム」に戻りやすくなります。これでは、なかなか動作の修正が進みません。

その点、ネットスローはコントロールへの意識を最小限に抑えることができます。「修正すべき動作」に集中できることは、フォーム改善において非常に重要です。


【ネットスローの事前準備】

野球肘動作改善のためのネットスローの事前準備。目印のタオルとステップ位置を確認するライン

ネット・白線(コーン)・目印の設置例

まずは、正確な動作を確認するための「環境」を整えます。

  • ネットの中心に目印(タオルなど)を設置する:「投げたボールがどこに行ったか」を確認する目安にするため。
  • 軸足の接地位置から目印に向けて「直線を引く」または、「コーンなどを置く」(ステップ位置の邪魔にならない場所に):踏み出した足が真っすぐ踏み出せているかを確認するため。
  • 軸足からネットまでの距離は、「腕を振って指がネットにあたらない距離」、または、「悪送球しても、ボールがネットの枠から外れない距離」が望ましいです。

ネットスローで意識すべきチェックポイント(右投げの場合)

  1.  軸足(右足)の向き:セットポジション推奨
  2. 左足の接地位置とつま先の向き
  3. 左足接地時の「体の開き」を抑える
  4. 正しい(最適な)「トップの位置」
  5. トップからボールリリースまでの「肘下がり」に注意
  6. フォロースルーをしっかりとる

1. 軸足(右足)の向き:セットポジション推奨

セットポジションから右足(軸足)一本で安定して立っている状態

軸足(右足)でしっかり立った状態

  • 右足(軸足)で立った時、右足の土踏まずを投球方向に対して「垂直」にセットする。(可能な範囲で)。
  • 軸足で立った時に、フラつかずにしっかり立つ。この局面でフラつくと、それ以降のフォームがバラつき、コントロールにも影響し、肘の故障にもつながる。
  • 基本的に膝を伸ばすことを推奨していますが、スムーズな体重移動ができる膝の角度(選手が安定したフォームで投げられる角度)が最適と考えます。

2. 左足の接地位置とつま先の向き

野球のピッチングで左足を目標に対して真っすぐ踏み出して肘に負担がかかりにくい例

目標に対して左足を真っすぐに出している

  • 左足を投球方向に対して真っすぐ踏み出し、つま先も正しく投球方向を向いているかを確認する。
  • 左足の接地位置が、外側(アウトステップ)や内側(インステップ)になると、「体の開き」が早くなり、肘に負担がかかる原因となる。

【ポイント】

「左足を真っすぐ出す」というのは、理想であり、インステップまたはアウトステップをすることで体の開きが抑えられるのであれば、それがその選手の「最適なステップ位置」ですので、経過を見る必要があると考えます。


3. 左足接地時の「体の開き」を抑える

野球のピッチングフォームで左足接地時に左腰や上半身が開きが抑えられていて肘に負担がかかりにくい例

左足接地時に胸の開きが抑えられている

左足を接地した時、左腰の開き(股関節の外旋可動域)は個人差があるため、左腰の開きを抑えることが難しい場合がありますが、上半身の開きは、抑えることは可能と考えている為、可能な範囲で上半身の開きを抑えらるような投球動作を体得する。

左腰や上半身の開きが抑えられれば、スムーズな運動連鎖(キネティックチェーン)ができ、肘に負担がかかりにくくなる。


野球のピッチングフォームで左足接地時に左腰や上半身が開いて肘に負担がかかる例

左足接地時に上半身や左腰が開いている

左足が接地した時に、左腰や上半身が投球方向へ早く開きすぎないようにする。

左腰や上半身の開きが早いと、目標に対してボールをコントロールするために、

  • 肘の屈曲角度が浅くなる
  • リリースポイントが早くなる

などで、スムーズな運動連鎖ができず、肘に負担がかかる。

 

【ポイント】

股関節が開きにくい(外旋可動域が狭い)選手は、股関節の開きが早くなってしまうため、上半身の開きをより我慢する必要がある。(日頃の股関節を開くストレッチが重要)


4. 正しい(最適な)「トップの位置」

野球のピッチングフォームでトップの位置で肘が肩の高さまで上がっていて肘に負担がかかりにくい例

トップの位置(肘の高さ)が肩の高さまで上がっている

左足の接地後、加速期に入る直前(レイトコッキング期)に、トップ(肘の高さ)が「肩の高さ」まで上がっているのが理想。

この「肘の高さ」と「肘の屈曲角度」であれば、肘の内側へのストレスがかかりにくい。


野球のピッチングフォームでトップの肘の高さが肩の高さまで上がっていない為、肘に負担がかかりやすい例

トップの位置(肘の高さ)が肩の高さまで上がっていない

左足の接地後、加速期に入る直前(レイトコッキング期)に、トップ(肘の高さ)が「肩の高さ」まで上がっていないと、肘の内側へのストレスがかかり故障につながる。

また、肘の屈曲角度が浅い(ボールの位置が体から離れている)と肘の内側にストレスがかかりやすい為、内側靭帯などを痛めやすい。


【ポイント】

「トップの位置=肘の位置が肩の高さ」は、あくまでも理想です。その選手がボールに力を伝えやすいトップの位置が、その選手にとっての「最適なトップの位置」だと考えます。

 

【経験談】

以前、中学生の指導をしていた時、少しトップの位置が低い選手に「肘を少し上げて投げた方が良い」と伝えたところ、途端に強いボールが投げられなくなってしまいました(パフォーマンスの低下)。

理論上は、「トップの位置は肩の高さ」であるのが望ましいですが、もし、トップが肩の高さまで上がらなくても、

  • それを補うだけの肩甲骨の柔軟性がある
  • 強いボールが投げられる
  • 肘に痛みが出ない

のであれば、その肘の高さはその選手にとって「最適なトップの高さ」であるため、経過を見る必要があると感じました。

5. トップからボールリリースまでの「肘下がり」に注意

加速期に肘の高さが肩の高さで維持できていて肘に負担が少ない投球フォームの良い例

加速期に両肩の延長線上に肘の高さが維持できている状態

トップから加速期(アクセラレーション期)にかけての腕を振っていく局面で、右肘の高さが「両肩を結んだ延長線上」にあることで、最大外転外旋時(MER:Maximum External Rotation)に、肘の内側へのストレス(負荷)が、かかりにくくなる。


加速期に肘の高さが肩の高さより下がっていて肘に負担がかかりやすい投球フォームの悪い例

加速期に両肩の延長線上から肘が下がっている状態

トップから加速期(アクセラレーション期)にかけての腕を振っていく局面で、右肘の高さが「両肩を結んだ延長線上より下がる」と、最大外転外旋時(MER:Maximum External Rotation)に、肘の内側へのストレス(負荷)がかかり野球肘の原因になる。


【ポイント】

「フォームの修正」が目的ですので、腕を振る速さはゆっくりで構いません。

腕を振るスピードを速くしてしまうと、無意識のうちに今までの慣れた「肘が下がる動き」に戻ってしまう可能性があります。

肘が適切な位置(高さ)を通る感覚を繰り返し、体に覚え込ませましょう。

6. フォロースルーをしっかりとる

野球のピッチングフォームのフォロースルーで腕を振り切って肘に負担がかかりにくい例

最後まで腕を振りぬいたフォロースルーの状態

ボールリリース後、腕を途中で止めずに最後までしっかりと振り切る。

腕をしっかり振り切ることで、肘の外側や後ろ側への負担は少なくなる。

もし、体が硬く(前屈の可動域制限がある場合)、腕を振り切るフォロースルーが取れない場合は、左足の接地位置(ステップ幅)を狭くして、腕が振り切れるような対応も必要と考えます。


野球のピッチングフォームでフォロースルーを途中で止めてしまい肘に負担がかかる例

フォロースルーを途中で止めて、肘に負担がかかる状態

フォロースルーを途中で止める動作は、肘に急ブレーキがかかるため、

  • 肘の外側の故障(外側上顆への牽引ストレス:肘の外側の骨が引っ張られる力)
  • 肘の後ろ側の故障(肘頭と肘頭窩のインピンジメント:肘の後ろ側の骨同士がぶつかること)

につながる。

腕をしっかり最後まで振り切り「体全体でブレーキ」をかけることで、肘の故障のリスクを下げることにつながる。

 

【ポイント】

「体が硬い(前屈や開脚前屈動作ができない、可動域が狭い)選手」は、腕を振り切ることが難しい為、可能な範囲で体の柔軟性が出るように、日々のストレッチが必要です。


野球肘に関するよくある質問

Q:野球肘が治らないのですが、どうしたらいいですか?

A:野球肘の痛みの原因が「筋肉の張り」でありながら痛みが改善しない(再発を繰り返す)場合、主に以下の要因が考えられます。

  • 治し方がわからない(ストレッチやセルフマッサージを継続しても痛みが改善しない場合は「セルフケアの限界」です)
  • 肘周囲および肩周囲の筋肉の張りが緩んでいない
  • 肘に負担のかかる投球フォームの改善ができていない

当院では、元プロ野球チームのトレーナーとしての施術経験を活かし、投球障害予防の観点から医学的根拠をもとに、

  • 肘や肩の可動域や筋肉の張りを確認
  • 鍼やマッサージによる関連部位への施術
  • 肘に負担のかからない投球フォームのアドバイス

を行っております。

長引く野球肘でお悩みの方、是非、当院にご相談ください。

Q:小学生・中学生(ジュニア期)が野球肘になる原因は?

A:小学生・中学生(成長期・ジュニア期)の野球肘は、以下の原因が考えられます。

  • 投球過多(投げ過ぎ)
  • 投球フォームの破綻(肘に負担のかかる投球動作)
  • 手の大きさに対してがボール(J号球・M号球・硬式球)が大きい。(手や指に必要以上の力みが生まれる)
  • 手が小さい選手は、人差し指・中指・親指の三本できれいな二等辺三角形でボールを握ることができず、きれいな縦回転のボールを投げにくい
  • 手の小さな選手はボールをしっかりと握ることができず、「スライダー回転」の軌道になってしまう(スライダーの多投)
  • ボールをしっかり握れない場合、「ボールがすっぽ抜ける」ことを防ぐ為に、無意識に手(指)に力が入る。その力みが「前腕の筋肉の張り」になり、その前腕の筋肉の張りが内側上顆などへの牽引ストレスとなり、野球肘の痛みになる。
  • ボールリリース時に手のひら(人差し指・中指)の向きが、「スライダー回転をさせる向き」になっているため、ストレートを投げているつもりでも、すべて「スライダー回転」のボールになってしまう(小学生は変化球禁止ですが、キャッチボールの段階で「スライダー」を投げる選手が多くいるように感じます。)

そのため、これらが改善できなければ、ジュニア期の野球肘は再発する可能性が高くなると考えます。

 

※手の小さい選手がボールを二等辺三角形で握れない場合は、極端な話にはなりますが、「直角三角形(親指を外側に逃がす)」や「わしづかみ」でもよいと考えます。要は、「握り方」よりも「縦の回転」のボールを投げられる「投げ方(腕の振り・手のひらの向き)の体得」が必要と考えます。

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